膝半月板損傷
今月は、半月板損傷の部分切除、前十字靭帯再建、矯正骨切り術など
膝関節鏡手術だけで13件ありました。
以前も紹介しましたが、当院で最も多い手術である
関節鏡下内側半月板部分切除の動画を供覧します。
今月あった半月板損傷手術のなかで、最もわかりやすい症例だったので、
患者さんの了解を得てブログに載せさせてもらいました。
50代男性の内側半月板損傷です。
画面上の丸い部分が、大腿骨の関節面、画面下が脛骨(すねの骨)の関節面、
間にあるものが、断裂した半月板です。先端の丸い金属のフックで引っ掛かりを確認します。
吸引しながら、シェーバーという器械で傷んだ部分を削ります。
このあと、パンチという半月板を削りとり道具で形を整えます。
フックで引っ掛かりがなくなったことを確認します。
手術は1cm以下の傷2カ所から、カメラと手術器具を挿入し15分程度で終わります。
この患者さんの術前の痛みは、直後より劇的に改善しました。
半月板は、断裂の形(縦断裂・横断裂・水平断裂等)によって痛み方はまちまちです。
しかし共通することは、保存治療(リハビリや薬物療法)がほぼ無効だということです。
半月板は血流が極めて乏しいため、自然治癒が期待できません。
前医で、数カ月にわたってリハビリ、湿布、ヒアルロン酸の注射を行っても改善しないと
当院を受診する方がたくさんいらっしゃいます。
気になる方は、診察にこられてください。
足関節粉砕骨折
当院では、年間100台ほどの救急車を受け入れています。
激しい骨折であっても対応できることが救急隊に認識されてきたようで、
手や足が腫れて変形している、「明らかに折れている」方の搬送が増えてきました。
本日紹介するのは40代男性の足関節粉砕骨折です。
関節面がバラバラに粉砕しています。
3か所から骨折部を展開し、関節面を整復してからロッキングプレートで固定します。
術前
術後
かなり難易度が高い手術ですが、関節面が綺麗に整復できています。
最近は、部位ごとに専用のロッキングプレート(プレートとスクリューがロックして緩まない)が
あるため、関節内の粉砕骨折であっても強固な固定ができるようになりました。
強固に固定できれば、早期の関節運動や荷重が可能となります。
獅子目整形外科病院より手術見学
当院ではH30年4月より、人工股関節置換術の前方進入法(ALS)を導入しています。
人工股関節の構造的宿命といえる脱臼リスクを、劇的に減らす進入法です。
先日、宮崎市島之内の獅子目整形外科病院院長 獅子目亨先生が当院のALSの見学にこられました。
獅子目先生は私と年が近く、境遇も似ており(個人病院・医院で手術を行っている宮崎で数少ない整形外科医)
普段から仲良くさせていただいています。
助手として手伝っていただきながら、通常の方法(後方進入法)との違いをディスカッションでき、
有意義で楽しい時間となりました。
獅子目先生もALSを導入されるため、今回の手術見学がお役に立てば幸いです。
前十字靭帯再建術 岡崎先生をお招きして
2018/7/14 東京女子医大整形外科主任教授 岡崎賢先生をお招きして前十字靭帯再建術を行いました。
私も前十字靭帯再建術の執刀は行いますが、スペシャリストを招いて一緒に手術をすることは
とても良い勉強と経験になります。
ピットフォール(コツ)をひとつひとつ確認しながら、技を自分のものにしていきます。
H30年前半期手術件数まとめ
H30年1月~6月の手術件数を確認しました。
総手術件数199例(人工関節48例)でした。
H28年は1年間で197件でしたので、2年前の倍のペースとなっています。
基幹病院や大学病院のような看板のない個人の診療所で手術を受けていただけるのは、
大変光栄なことです。
しかし、有床診療所のベッド数は19床のため、ベッドの空きがないために
手術を待っていただくことがことがあります。
また関節鏡手術は滅菌・消毒の理由で一日1例しかできないため、
お待ちいただくことがあります。
ご了承ください。
九州中央病院での手術研修
4/25は外来を休み、丸一日、九州中央病院(福岡市)で人工股関節の新しいアプローチ法の実技指導を受けてきました。
その道のスペシャリストである濱田貴広先生より、丁寧にその極意まで教わりました。
手術手技は日進月歩で、今それほど困っていないからと従来の方法に固執していれば、いつの間にか時代遅れになってしまいます。
目の前の手術をこなすだけでなく、これからも機会があればどんどん学びに行きます。
職場体験(鵬翔高校)
4/4鵬翔高校1年生2名が職場体験にこられました。
午前中に外来、午後に人工関節手術の見学を行いました。
学業優秀で礼儀正しく、将来が本当に楽しみなお二人です。
将来の職業選択の一助になれば幸いです。
岡本整形外科では、意欲ある中学生・高校生の職場体験を積極的に受け入れています。
H30年3月手術まとめ
今月はたくさん手術したなと数えてみたら、3月の手術件数は42件でした。
腱鞘切開は同時に2本、3本している症例もあったり、足首は2本の骨を同時に固定したりしているので、実際はもっとあるのですが、カウントの仕方に一定のルールを設けないと、比較しにくいため1件にしています。
両膝や両手同時手術は2件でカウントしています。
外傷の処置や単純な縫合は、手術にカウントしていません。
全身麻酔手術 29件
人工膝関節全置換術(TKA) 2件
人工膝関節単顆置換術 (UKA)1件
人工股関節再置換術 (THArevision)1件
高位脛骨骨切り術(HTO)1件
膝関節鏡視下半月板部分切除 9件
骨接合 6件(大腿骨1、脛骨1、足関節(脛骨・腓骨)1 上腕骨 1 橈骨1 踵骨1)
抜釘 6件(中手骨1、膝蓋骨、橈骨、脛骨2、足関節(脛骨・腓骨)1)
滑膜切除(人工関節後) 1件
関節授動術 1件
腫瘍切除 1件
局所麻酔手術 13件
腱鞘切開 9件
手根管開放術 2件
骨部分切除(関節内骨片摘出) 1件
腫瘍切除 1件
抜釘(ばってい)とは、骨折手術で用いたプレートやスクリューを、骨癒合後に外す手術です。
骨膜や骨髄内には痛覚があるので、食い込んだスクリューをを取ることは、局所麻酔では難しいです。
大病院のような看板がない個人診療所で手術を受けていただけるのは、大変光栄なことです。
50代男性足関節靭帯修復術
足の捻挫は非常に数か多く、多い日は一日で3~4人くることもあります。
痛みや腫れの程度で、湿布のみ、サポーター、ギプス固定+両松葉杖等の選択枝があります。
ほとんどの方が、保存治療で完治します。
しかし保存治療後に高度な不安定性が残存する場合は手術が必要になります。
50代男性保存治療で治癒せず靭帯修復術を行った症例です。
修復した靭帯の真ん中に黒い点のようなものが見えます。
これは下の図のように、本来の靭帯付着部の骨に特殊な糸を打ち込んで、
それを用いて切れた断裂を本来の付着部に縫い付けた部分です。
以前はワイヤーで穴を空けたり、随分と手間をかけて糸を通したりしていましたが、
便利な器具ができると、手術が容易となるだけでなく、患者さんへの侵襲が小さくなります。
この症例の場合は、靭帯が残存していましたが、靭帯が萎縮・消失している場合は、
他の部位から腱を持ってくる靭帯再建術が必要になります。
10代中手骨骨折手術
ブログに手術症例を出すと書いておきながら、1か月以上すぎてしまいました。
実際載せるとなると、少ない写真と短い文章で誤解なく伝える必要があり、慎重になってしまいます。
比較的分かりやすい骨折症例を提示することにします。
次の写真は10代男性、スポーツによる第3中手骨骨折です。
中手骨は掌の部分の骨だと思ってください。
どこが折れているか分かると思います。
ズレがなければギプスで良いのですが、この症例は短縮しています。
放置やギプスでも骨癒合はしますが、変形が残存します。
この部位の変形は、最悪の場合、手を握ったときに中指が他の指に重なってしまいます。
超高齢者や認知症でもない限り手術適応です。
手術の選択は主に3つあります。
①骨折部を完全に展開してプレートとスクリューで固定
②中手骨の根本の部分に1㎝の切開を加えてワイヤーを骨髄内に入れて固定
③切開せずに、レントゲン透視下に整復して皮膚ごしにワイヤーで固定。ワイヤーの根本は皮膚外に出しておく
それぞれに一長一短があり、骨折型、年齢、活動性、麻酔法により選択されます。
今回は②の方法で行いました。傷は小さく、固定性は強固です。
2本の中空の筒を縦に繋いで、中に固くい太い芯を入れるイメージです。
ワイヤーはすべて骨内と皮下に入っているため、抜糸後は手を自由に使えます。
欠点はワイヤーの選択、先端の曲げ方、打ち込む角度と強さ、ワイヤーの曲がりを利用した中からの整復等、
結構テクニックが必要なことです。
テクニックがなければ、髄内に入っていかないワイヤーと格闘し続け、いくら時間をかけても手術が終わりません。
術後2カ月の写真です。十分な骨癒合を得られ、手に衝撃のかかるスポーツ活動も許可しました。
ワイヤー抜去はいつでも良いので、学生さんの場合夏休み等休みが取れるとき、スポーツ選手の場合シーズンOFFで大丈夫です。
シンプルな指の骨折なのに、こんなに長い文章を書いてしまいました!!