人工関節周囲の骨折
人工関節は50〜85歳頃の方が多く受ける手術です。
手術により劇的に疼痛は改善しますが、その後は、また歳をとっていきます。
10年経過すれば、75歳の方は85歳、85歳の方は95歳になります。
徐々に下肢の筋力が落ち、目が悪くなり、転倒しやすくなります。
10年以上前に他院で人工股関節置換術を受けた70代の女性が、転倒により当院へ救急搬送されました。
左の大腿骨は大腿骨ステム直下で骨折しています。
この方は他院で人工股関節手術後に再手術を受けており、ケーブルが巻かれています。
骨折部に人工関節ステムの末端・ケーブルがあるため、このままでは骨癒合を見込めません。
前回手術のケーブルを抜去し、ケーブルを巻き直し、プレート固定を行いました。
さらに骨癒合を促すために、腸骨からの骨移植を行なっています。
このように、手術でなんとかすることはできるのですが、骨癒合までは時間がかかるため、
歩行能力は低下することが多いです。
一番大事なことは、転倒しないことです。
今は元気でも、人は歳をとれば必ず転倒しやすくなります。
家をバリアフリーにする、トイレやお風呂に手すりをつける、
適切なタイミングで杖やシルバーカーの使用を検討するなど、対策が必要になります。
電子カルテ化完了
2021年3月より電子カルテを導入しました。
カルテの保管期間は、最終受診日から5年間と法律で決まっています。
カルテ庫にある、2016年3月から2021年2月までが最終受診日である紙カルテの、スキャン作業を開始しました。
6ヶ月かけて、やっと空になりました。
私が全てのカルテを仕分け・分類を行い、受付、看護師、看護助手、秘書、理学療法士ら総力でスキャン作業を行いました。
これで休日や、診療終了後の18時から22〜23時まで、連日残って作業する日々が終わります。
外来は完全電子カルテ。入院カルテは、取り回しの良いミニカルテを作り退院時にスキャンしています。
紙カルテは5年来院がなければ、スペースの関係もあり処分されていたので、
人工関節の術後の患者さんが久しぶりに来院したとき、情報がないことがありました。
電子カルテになれば、今後はほぼ永久的に診療録が保管されます。
この部屋はカルテ棚が撤去され、面談室に変更する予定です。
高度な外反膝(X脚)の人工膝関節全置換術
先日70代の女性で、高度な外反膝(X脚)の人工膝関節全置換術(TKA)を行いました。
右膝が内側に入ったようなX脚になっています。
内反膝(O脚)が進み、膝の内側の軟骨がなくなる内側型の変形性膝関節症で
人工膝関節置換術が必要になる方が圧倒的に多いです。
しかしこの方は、外側の軟骨がなくなる外側型の変形性膝関節症です。
人工膝関節は、内側の靭帯の緊張に合わせて設置するため、このように内側の靭帯が
伸びきってしまっている外側型の変形性膝関節症は難易度の高い手術となります。
通常の人工関節より拘束性(安定性)を高めた機種を選択することで
内側の靭帯が伸びている方でも安定したまっすぐな膝にすることができます。
コロナワクチン
先日コロナワクチン1回目接種のため、宮崎市郡医師会病院に行ってきました。
当院もそうですが、面会禁止となっていました。
入院中は寂しいかもしれませんが、スマートフォンのビデオ通話などをご利用ください。
当院から処方された痛み止めや骨粗鬆症治療薬を内服中の患者さんから、
「飲んでいるけどワクチンを受けても大丈夫か?」の確認電話がよくきます。
全く問題ありませんので、どうぞワクチンを接種してください。
アナフィラキシーショックのような稀な副反応は予想が難しいため、
万一起きてしまった場合は「運が悪かった」と思うしかありません。
接種会場は副反応に対応できる体制になっていますので、ワクチンは是非受けましょう。
電子カルテ導入
2021年3月より電子カルテを導入しました。
岡本整形外科に戻る前は、ほとんどの病院が電子カルテでしたので、特に操作は困りません。
スタッフもすぐに適応してくれました。
しかし27年前から積み上がった紙カルテは、簡単に整理できるものではありません。
この写真は今週末の宿題です。
長い方は1994年からの記録があります。
すべてスキャンするわけにもいかず、要点をサマリーにまとめていきます。
パラパラとページをめくっていくと、現在普通に通っている患者さんが、
過去に大怪我をして大手術を受けていたりと、ついつい手が止まってしまいます。
分厚すぎる紙カルテは、過去の大事なイベントがわからなくなります。
終わりがみえない作業ですが、患者さんの長い歴史を振り返る、よい機会となっています。
手術室改装中
2/21~3/7の間、手術室の改装工事を行います。
無影灯交換、酸素の中央配管、手術準備室の拡張、
手術器械の自動洗浄機導入、電子カルテ対応、床の張り替え等を行います。
、
医院開設時に、父が中古で購入した無影灯は引退となります。
壊れたわけではなく、十分使えるのですが、
最近のLED照明の光量、自動焦点調整機能、光量調整等には残念ながらかないません。
LED照明のメーカーさんが現場確認にきたとき、過去に取り扱っていた商品だったそうで、
「昔の資料でしかみたことがない」と、現役であることに驚かれました。
手術準備室を拡張するために、私の部屋が狭くなります。
コンクリート壁を壊す轟音の中、ブログを更新しています。
2020年手術件数
2020年(1/1~12/31)の手術件数は446件でした。
全身麻酔手術 348件
人工関節手術134件 (人工膝関節全置換40件 人工股関節全置換38件 人工膝関節単顆置換56件)
膝関節鏡手術(半月板部分切除・縫合・靭帯再建・滑膜切除) 97件
高位脛骨骨切術 18件
骨折手術 32件
抜釘術 42件
その他 25件
局所麻酔手術98件
腱鞘切開術 51件
手根管解放術 21件
ガングリオン摘出術 8件
骨折手術 4件
その他 15件
両膝、両手同時手術は2件で数えています。
高位脛骨骨切術と同時に関節鏡手術(主に半月板部分切除)も行いますが、高位脛骨骨切術1件としています。
手関節(橈骨・尺骨)、足関節(脛骨・腓骨)は2箇所同時骨折でも骨接合、抜釘とも1件で数えています。
腱鞘切開は2本、3本同時に行っても1件で数えています。
2020年はベッドが満床のことが多く、救急搬送を断ることが多かったため外傷は減りました。
部位別には、膝関連手術が人工膝関節(全置換・単顆置換)96件、膝関節鏡97件、高位脛骨骨切18件、抜釘13件で224件となり、
全手術数の過半数となりました。
年末のイベントなど
11月中旬、鵬翔高校1年性2名の手術見学がありました。
学年トップを走る、将来が楽しみな女子学生二人です。
人工膝関節全置換術を見学しました。
12/4 持田製薬の社内研修会の講師を行いました。
12/7〜11 宮崎医療福祉専門学校から、理学療法士を目指す学生が実習にきました。
関節鏡手術、骨折手術を見学しました。
12/12 東京女子医大教授 岡崎賢先生をお招きして、後十字靭帯再建術を行いました。
12/28 年内の診療終了。2020年の手術件数は446件(人工関節133件)でした。
TV収録
宮崎のテレビ局であるMRTの企画番組「教えて先生!ひざのお悩み相談室」の収録に行ってきました。
人工膝関節単顆置換術(UKA)について解説しました。
当院で手術を受けた患者さんのVTR、予め診察室で撮ったVTRを交えながら番組収録が進行します。
台本は、一応流れをつかむ程度はあるものの、ゲストからの質問は何がくるか予測不能です。
なんとか撮り直しをすることなく、私の出番は終わりました。
TV番組が作られる現場を、出演者として参加できたことは貴重な経験でした。
そして、タレントの皆さんの脅威のアドリブ力に圧倒されました。
2020/11/29(日) 15:00~16:00放送予定です。
後十字靭帯再建術
先日、東京女子医科大学整形外科教授の岡崎賢先生を招いて
後十字靭帯(PCL)再建手術を行いました。
私は、ほとんどの膝の手術を一人で行っていますが、
この手術だけは、一人で行うことは難しいと考えています。
できなくはなくても、手術時間が長くなりすぎると術後の腫れや痛みが強くなり、
患者さんに負担をかけてしまいます。
関節鏡手術を完全にこなせる医師二人がかりで行うことで、安全確実に、短時間で
手術を終えることができます。
岡崎先生は膝関節手術のスペシャリストであり、
学会や勉強会の演者として引っ張りだこです。
手術の前後や合間に、膝関節節手術の最近のトレンドを聞けたり、
ディスカッションすることができ、良い刺激をいただけます。