オーダーメイド人工膝関節(PSI)
当院では、全ての症例ではありませんが、
人工膝関節全置換術に対し、患者ごとにオーダーメイドでの骨切りガイド
(Patient Specific Instrument=PSI)を作成します。
かなり新しい技術で、使用しているところはまだ多くありません。
人工膝関節置換術における、大腿骨と脛骨の骨切角度(屈曲伸展・内外反・左右回旋)は、
股関節と足関節の位置を含めて計画をたてます。
術前にX線で股関節・足関節を含めて撮影し、計測して計画しますが、2次元画像のためどうしても限界があります。
PSIは、全下肢の3DCT画像から解剖学的に理想とする骨切りガイドを作成します。
3DCT画像を元に大まかな計画が送られてきて、術者が微調整し最終決定。
アメリカの人工関節メーカーより輸送されてきます。
長所短所をまとめると。
長所
●驚愕の精度で人工膝関節が設置できる →わずかな設置角のズレによる膝動作時の違和感が少なくなる
●手術侵襲が小さくなる →出血量減少。腫れが減り、回復が早い
(手術では10~12cmの皮膚切開しか視野がない。解剖軸を確認するために
様々なガイドを骨に穴を空けて設置する。そのため本来必要のない侵襲が加わる。それが一切不要となる)
短所
●手術が決して簡単にならないし、手術時間が短くもならない(正確に設置できるかは、術者次第)
●術前の手間がかかる
(X線のみの手術計画は10分でできるが、海外との数百メガの画像のやりとり、微調整、承認手続きで1時間近くかかる)
元々この骨切りガイドがなくても、良好な設置ができていたわけで、基本的になくてもできます。
しかし、3次元の膝に対して2次元のX線で計画しても、数度・数mmの誤差は生じます。
PSIは、技術と経験だけでは補えない部分をサポートしてくれます。
ただ軟骨や靭帯が邪魔をして正確な設置は意外に難しく、結局は術者次第です。
PSIは人工関節が簡単になるわけではなく、
熟練者が使ったら「鬼に金棒」となると理解してもらえば良いと思います。