2024年手術実績
2024年度(1月〜12月)の当院での手術実績をご報告いたします。
全手術件数 560件
全身麻酔手術 475件
局所麻酔手術 85件
全身麻酔手術
膝関節鏡手術(半月板切除・縫合、靭帯再建等) 158件
人工膝関節単顆置換術(UKA) 155件
人工膝関節全置換術(TKA) 61件
人工股関節全置換術(THA) 27件
人工関節再置換術 3件 (人工関節手術 合計246件)
高位脛骨骨切り術(HTO)24件
抜釘術 28件
骨折手術 9件
その他の手術 10件
局所麻酔
腱鞘切開術50件
手根管開放術19件
骨折手術6件
その他の手術10件
例年通り、両膝同時手術は2件でカウントしています。
腱鞘切開は2本以上の同時手術もありますが、同側の場合は1件でカウントしています。
人工関節のメーカーさんから話なので、調査したわけではありませんが、
人工膝関節単顆置換術(UKA)の手術件数は、鹿児島・宮﨑圏内で当院が最多のようです。
高位脛骨骨切り術(HTO)も、手術インプラントを扱うメーカーさんから宮崎県内で最多といわれました。
多くの方に当院での手術を選んでいただき、大変光栄に思います。
70代男性 後十字靭帯再建術
スポーツ選手に多い「前十字靭帯断裂」は、膝の捻り動作により生じることが多いです。
対して「後十字靭帯断裂」は、転倒により膝前面を強打することにより生じます。
転倒により生じるため、年代問わず生じます。
前十字靭帯断裂も後十字靭帯断裂も、若年者では手術を行うことが多く、
中高年以降では、理学療法・装具など保存治療を選択することが多くなります。
後十字靭帯断裂は、前十字靭帯に比べて日常生活動作で
困ることは少ないため、中高年以降で手術を選択することは稀となります。
今回の症例は70代の男性ですが、マスターズの大会に連続出場するアスリートです。
後十字靭帯は、レクレーションレベルのスポーツであればサポーターでなんとかなりますが、
記録を競う競技は不可能なります。
強い希望と覚悟があったので、再建術を行いました。
金属の棒で触れている部分が、後十字靭帯の付着部ですが、
剥がれてなくなっています。
2本見える靭帯のうち右側が再建靭帯です。
動画では再建靭帯の緊張が良好であることが確認できます。
この手術は一人では大変なため、東京女子医科大学主任教授である岡崎賢先生に
応援にきていただき一緒に行っています。
靭帯再建手術においては、実年齢よりも、
本人のスポーツに対する意欲、手術やリハビリに対する覚悟が重要となります。
半月板縫合術の2例
膝半月板は、大腿骨と脛骨の間にあるクッションであり、膝の安定性においても重要な役割を果たします。
若年者では、外傷により損傷を起こしますが、中高年以降では年齢による変性(加齢による劣化・柔軟性の低下)の結果損傷を起こします。
半月板は血流が乏しい組織であり、治癒力が極めて弱いため、断裂が生じた場合、関節鏡による部分切除が一般的に行われます。
しかし、若年者では、切除による半月板の機能低下により、将来変形性膝関節症となるリスクが高いため、可能であれば関節鏡での縫合を行います。
縫合をおこなった2症例を紹介します。
1例目は30代の女性です。
断裂型としては、縦断裂となります。
このタイプは、血流がある半月板外縁の損傷であるため高い治癒率を期待できます。
処置前の画像
縦断裂によって、半月板は前方に引き出され、激しい疼痛が生じます。
術後の画像動画
縫合糸3本による固定
本来の位置にしっかり縫合されています。
もう2例目は30代の男性です、
断裂型としては、FLAP型となります。
Input HD SDI
断裂部分に、血流がほぼない半月板内縁が一部かかっているため、治癒率が下がります。
しかし、切除した場合は半月板機能の大部分を失ってしまうため、若さに期待して縫合を行いました。
処置前の画像
FLAP状の断裂。縫合に向いた断裂型ではありませんが、半月板そのものの変性は少ない状態です。
術後の画像
強固に縫合できています。
しかし装具による固定期間は、やや長めとなります。
半月板縫合は、縫合技術の研究や進歩により、以前に比べて積極的に行われるようになっています。
しかし、すでに変形性膝関節症が進んでいる高齢者、肥満、O脚バランスであれば、
縫合単独による治癒は厳しくなります。
それでもなお、縫合に臨む場合は、以前のブログでも紹介している高位脛骨骨切り術の併用が必須となります。
半月板縫合は再断裂(縫合した部分が裂けること)が、無視できない確率で生じます。
また長期間の免荷(体重をかけないこと)と装具の着用が必要です。
入院期間は3〜4週となります。
そして再断裂した場合は、再手術が必要となります。
しかし、半月板機能の大部分を温存することができます。
対して半月板部分切除は、再断裂は起きません。
翌日から通常の歩行が可能で、入院期間は4〜8日程度です。
しかし、将来的に変形性膝関節症が悪化し、人工関節や高位脛骨骨切り術が必要となる可能性が高くなります。
症例ごとに変わりますが、大まかにわけるのであれば、
10〜30代 縫合単独
40〜50代 縫合+高位脛骨骨切り術
60代〜 部分切除 (再断裂リスクが高くなる年齢だが、理解があれば縫合+高位脛骨骨切り術)
と考えてください。
40〜50代でも縫合単独はありえますが、
この年代は、半月板が切れてしまうそれなりの理由(変形性膝関節症、O脚バランス、肥満など)があることが多いです。
再断裂してしまえば、数ヶ月の治療が振り出しにもどるどころか、より半月板の状態が悪くなります。
中高年以降は、断裂に対して、一旦は部分切除にとどめておいて、将来変形性膝関節症が悪化することがあったら、
追加手術を考えることも選択枝となります。
なぜなら、半月板の部分切除を行なったからといって、変形が悪化すると決まっているわけではないからです。
実際には、X線写真、MRI検査、さらに体格、職業、スポーツ、過去の外傷歴、患者さんの希望など、
さまざまな様子を考慮して決定します。
また縫合を予定して手術を開始しても、想定以上に半月板の変性が激しい場合や断裂型によっては
縫合を断念して切除に切り替えることがあります。
外反膝(X脚)に対する大腿骨遠位骨切り術(DFO)
今まで何度か紹介してきた、変形性膝関節症に対する高位脛骨骨切り術(HTO)は、O脚バランスのため膝の内側の変形が進む患者さんに対する手術です。
O脚バランスをX脚バランスに変えることにより、膝の外側に体重の中心を移すことが目的となります。
圧倒的にO脚バランスの方が多いですが、中にはX脚バランスにより膝の外側の変形が進む方がいます。
今回紹介する症例は40代の女性です。
右足の股関節と足関節を結ぶ荷重線が、膝の外側を通っており、X脚となります。
MRIで高度な軟骨欠損を認めるため、高齢であれば人工関節でもよいのですが、若年のため
大腿骨遠位骨切り術(DFO)を行います。
大腿骨の内側を写真のように楔型に骨を切り抜き引き合わせます。
引き合わせてプレートで固定することにより、矯正した部位から先が、青矢印のように移動しO脚バランスに調整します。
HTOとは逆の原理になります。
HTOと違うところは、体重をかけるまでの期間が大幅に伸び、全体重をかけるまで約2ヶ月を要します。(HTOは約2〜3週)
松葉杖で帰る場合は、1〜2週間での退院も可能ですが、骨がついて歩けるまでとなると入院は長期となります。
30代男性 膝関節鏡による自家軟骨移植術
30代の男性。
7年前に左膝の前十字靭帯断裂に対して他院で再建術を受けています。
その後、全力疾走時に疼痛が出現し当院受診。
初診時の所見から前十字靭帯再断裂を疑いMRIを施行。
MRIで前十字靭帯の再断裂と大腿骨内側の軟骨損傷を認めました。
関節鏡では下の写真のように、体重がかかる大腿骨の内側に軟骨欠損を認めます。
前回手術後の靭帯安定性が良くなかったのか、外傷によるものかはっきりしませんが、
広範囲の軟骨欠損にたいしては、膝関節の別の部位から軟骨を移植する方法があります。
まずは、大腿骨の荷重がかかりにくい部分から、骨軟骨柱(軟骨・軟骨下骨、海綿骨)を筒状に採取します。
その後、移植する部位に、同じサイズの筒状の穴を掘ります。
そして、採取した骨軟骨柱を移植します。移植する骨軟骨柱を複数使用すれば広範囲の軟骨欠損に対応できます。
この症例は、1本の太めの骨軟骨柱で十分に欠損部分を補填できました。同時に前十字靭帯再再建術を行なっています。
全ての軟骨欠損に対応できるわけではなく、外傷や、若年者むけの手術となります。
高齢者の加齢・変形による軟骨欠損に対しては、人工関節や高位脛骨骨切術の適応となります。
2023年 手術実績
2023.1.1〜12.31までの手術実績を紹介します。
全身麻酔手術432件
局所麻酔手術83件
合計515件
内訳
全身麻酔手術 合計432件
人工股関節全置換術 35件
人工膝関節全置換術 47件
人工膝関節単顆置換術 163件
人工膝関節再置換術 3件
人工股関節再置換術 2件 人工関節合計250件
高位脛骨骨切術 19件
関節鏡手術 109件
骨折手術 12件
その他の手術 42件
局所麻酔手術 合計83件
腱鞘切開手術 58件
手根開放術 8件
その他の手術 17件
例年通り、両膝手術、両手同時手術は2件でカウントしています。
手指の腱鞘切開は同側であれば、何本同時でも1件でカウントしています。
人工関節手術の件数が大幅に増加し、骨折手術や、骨折後の抜釘手術が減りました。
入院期間が長くなる人工関節手術の割合が高まったため、19床のベッドはほぼ満床が続き、
外傷の救急車の受けいれが困難になったこと、外来にこられた骨折患者さんを他院に紹介することが多くなったからです。
ありがたいことに、宮﨑市のみならず、市外、県外、そして去年は国外からの患者さんの手術がありました。
退院後の術後リハビリは、リハビリ可能な近くの病院やクリニックに紹介状を作成しますので、
安心してこられてください。
50代男性 高位脛骨骨切術の術後1年 軟骨の状態
変形性膝関節症により、膝の軟骨が損傷することに対しては、
人工膝関節置換術、人工膝関節単顆置換術、高位脛骨骨切術を行います。
今回は、以前にもブログで紹介したことがありますが、
人工関節を使わずに、O脚バランスを調整することよって高位脛骨骨切術の経過を説明します。
50代男性。X線検査で左膝の内側軟骨は高度に損傷しています。
またMRIで内側半月板の損傷がありました。
術前X線写真。
膝関節内の動画
高度に軟骨が損傷しています。
また内側半月板は水平断裂という状態になっています。
半月板を部分切除したあとの動画
矯正骨切術後のX線
最初のX写真と比べてO脚が矯正されています。
術後1年目に、矯正のために使用したプレートを抜去します。
そのときに、膝関節内の動画です。
高度に損傷した軟骨が修復されたことがわかります。
全ての症例でこのようになるわけではありませんが、
バランス調整がうまくいくと、このように軟骨の修復が促されます。
活動性が高いスポーツ愛好家であれば、良い適応となります。
時間はかかりますが、人工関節と違い、術後の運動制限はありません。
2023年前半期手術件数 症例紹介 両膝同時人工膝関節全置換術
忙しくなり今年に入ってからの手術件数を数えていなかったのですが、
スタッフが空いた時間でカウントして教えてくれました。
1〜6月の総手術件数 265件
(主な手術)
人工膝関節全置換術22件
人工股関節全置換術15件
人工膝関節単顆置換術90件 (人工関節合計125件)
膝関節鏡手術56件
骨切り術11件
腱鞘切開37件
他36件
予定手術でベッドが満床のことが多いため、
手術内容によっては1〜2ヶ月以上待つことが多くなりました。
人工膝関節全置換術や人工股関節全置換術は、水・土PMしかできないため、お待ちいただくことが多いです。
骨折などの外傷を受けることが難しくなり、外傷の患者さんは、近隣の基幹病院に紹介することが増えております。
症例紹介
60代の男性です。
農業をされており、長く保存治療を続けていました。
以前より疼痛はあるものの、なんとか仕事はしていましたが、ついに限界を感じたようで手術を決意されました。
膝内側の軟骨が完全に消失し、高度なO脚となっています。
骨を切る角度を調整し、術後のレントゲンでは足のバランスがよくなっています。
両膝同時手術は、来院した患者さんが、驚かれることがありますが、入院期間の短縮や、二度の全身麻酔を
避けられるなど、メリットは多いです。
しかし、年齢、体力的な問題がある方、片方ずつを希望する方は、片方ずつ行なっています。
逆V字型矯正骨切り術の2例
日本人の多くがO脚気味ですが、それが高度な場合、
若年者でも膝の内側の変形性膝関節症が進みやすくなります。
50代以降であれば人工関節でも問題ありますせんが、30代〜40代の活動性が高い年代や
スポーツ愛好家は、人工関節より回復に時間がかかりますが矯正骨切り術を考慮します。
矯正骨切りは膝の内側を開くOPEN WEDGE型と、
膝の外側を短縮させるCLOSED型でほとんど対応できます。
どちらも1時間程度の手術です。
しかし、O脚が強く、大きな矯正が必要な場合、術後の外見に不自然さが出てきたり、
膝前面にかかるストレスが強くなる欠点がありました。
今回紹介する逆V字型骨切り術はそれらの欠点が生じることなく、大きく矯正できます。
欠点としては手術手技が煩雑になり、手術時間はほぼ2倍になります。
さらに回復までの時間も、通常の骨切り術より長くなります。
今回紹介する症例は、どちらも40代の男性です。両側同時に行なっています。
1例目は格闘技指導者です。海外在住の方です。
ホームページで当院のことを知ってこられました。
足を揃えて立っているのに、膝の間がおおきく開いており、
かなり強いO脚となっています。
このバランス自体は、生まれつきのもので、悪いわけではありません。
症状がなければ治療は必要ありません。
しかし運動に支障があり、手術を希望されました。
あまり長く滞在できず、すぐに海外に戻られるとのことで、
膝内側のプレートは分厚く強固なものを選択しています。
2例目はスポーツ愛好家の40代の男性です。
1例目の症例と同様に、かなりのO脚バランスです。
仕事への復帰をそれほど急がないため、
膝内側のプレートは皮膚への刺激が少ない薄型を選択しています。
どちらも足のバランスが大きく変わっていることがわかると思います。
回復に時間はかかりますが、人工関節と違い、骨癒合後に
運動に制限がないことが最大のメリットとなります。
2022年手術実績
2022年は524件の手術を行いました。
全身麻酔手術423件
人工関節手術190件
人工膝関節全置換術(TKA)72件
人工膝関節部分置換術(UKA)86件
人工股関節全置換術(THA)32件
膝関節鏡手術(半月板部分切除・縫合・靭帯再建など)140件
高位脛骨骨切り術(HTO)12件
骨折手術19件
抜釘手術47件
その他の手術15件
局所麻酔手術101件
腱鞘切開手術65件
手根管解放術28件
骨折手術4件
その他の手術12件
両手、両膝同時手術は2件でカウントしています。
腱鞘切開が同側の場合は、2〜3本同時手術でも、今まで通り1件でカウントしています。
2021年は、手術件数が急激に増加したため、スタッフの負担が増えてしまいました。
2022年は、時間外診療や救急外傷の受け入れを制限したため、手術件数はやや減っています。